テイクアウトに潜む食中毒~店舗側が注意すべきこととは~
コロナウイルスの影響で店舗での飲食を控える人が多くなったことで、「テイクアウト」を始める店舗も増えてきました。店舗で提供する場合とテイクアウトで最も異なる点は、「提供から食べるまでの時間」ではないでしょうか。加えて、夏に入り気温も湿度も上がり始めると食中毒のリスクも高まり、いつも以上に衛生面への気遣いが必要になります。安全に提供し、安心して召し上がってもらうために、店舗側でできる食中毒対策はなにがあるのでしょうか?テイクアウトを行う上での注意点を考えます。
食中毒予防の3原則
まず、食中毒を予防するには、食品を購入してから食べるまでの過程で、
・食品に細菌を「つけない」
・食品に付着した細菌を「増やさない」
・食品に付着した細菌を「やっつける」
という3つの原則を理解し、徹底することが求められています。
「つけない」
食中毒の原因となる菌は、食品についている場合だけでなく、手指や調理器具から、それを介して広がる恐れもあります。調理前はもちろん、肉や魚を触ったあと、盛り付け前などもこまめに手指や調理器具の洗浄・殺菌を行いましょう。食品ごとの調理器具の使い分けも効果的です。また、調理や盛り付けには、使い捨てできる割り箸やビニール手袋などを用いれば、より衛生的になります。
「増やさない」
食中毒の原因となる菌は、20℃~50℃で増えやすく、特に、人の体温に近い37℃前後で最も増えやすいといわれています。完成した料理を常温や厨房内で長時間放置してしまうと、食中毒の原因となる菌を増やすことになってしまうのです。完成した料理は、提供直前まで10℃以下もしくは65℃以上で保存し、完成後すぐにお客様に提供することで、菌を増やすリスクを減らすことが可能となります。
「やっつける」
食中毒の原因となる菌の多くは、加熱することで大半が死滅します。そのため、加熱調理が必要な料理は、加熱時間を守り、必ず中まで火を通しましょう。大半の細菌を殺すことができる「中心部を75℃で1分以上加熱」が一つの目安です。なお、肉や魚などの調理で使用した調理器具は、使用後にこまめに熱湯などで消毒をしてから使用することで、菌の繁殖を抑えることができます。しかしながら、「中心部を75℃で1分以上加熱」しても、一部の菌(セレウス菌やウェルシュ菌など)は芽胞を作って生き残ります。そして、冷えていく過程で50℃に達すると、一気に菌が増殖してしまうのです。一度加熱した食品を冷却する際には、50℃から20℃までの間を素早く通り過ぎるよう、完成後も気を配りましょう。
店舗がすべき食中毒対策
食中毒予防の「3原則」を踏まえて、店舗側がすべきことをまとめました。こちらにあげたものは一例ですが、3原則に則った対策となっていますので、できるものから取り組んでみてはいかがでしょうか?
1.手指や調理器具はこまめに洗浄・殺菌する
2.調理や盛り付けには使い捨てできる割り箸やビニール手袋を使用する
3.完成した料理は早急に冷ます
4.加熱調理が必要な料理は、加熱時間を守り、必ず中まで火を通す
5.食中毒のリスクが高い「生もの」や、加熱が十分でない「半生状態のもの」などはテイクアウトメニューで取り扱わない
6.注文を受けてから調理する
7.消費期限(時刻)を明記し、すぐに食べてもらうよう伝える
8.温かい料理は小分けにする
9.温かい料理と冷たい料理は一緒に詰めずに、冷ましてから詰める
10.保冷剤を入れて菌が繁殖しない温度を保ち続ける
食中毒は予防方法をきちんと守れば予防できる
自宅や職場などで気軽にお店の味を楽しんでもらえるテイクアウトは、コロナウイルスが蔓延する中で、店舗での営業に苦戦する飲食店にとっては、重要な収益源です。しかし、お店側の判断ミスでお客様の健康を害するようなことがあっては絶対にいけません。安心安全な料理を提供するためにも、対策を実施しながら無理のない範囲でテイクアウトを行うことが、お客様と店舗のためにも最も大切なことではないでしょうか。食中毒は予防方法をきちんと守れば予防できます。そして、予防方法の大半はお店側で実施できることです。食中毒予防の「3原則」を柱にしながら、テイクアウトを行いましょう!